立川志の輔さんの創作落語「大河への道」に心揺さぶられ、自ら映画を企画された中井貴一さん
友人たちと観てきました
物語は200年前、上空から地形を確認できるような技術など何もない時代に初めて日本地図を完成させたという伊能忠敬の死から物語は始まり、そこから舞台は現代パートへと移行
千葉県香取市では郷里の偉人である伊能忠敬を大河ドラマにするべくプロジェクトが動き始め、知事の指名により大物脚本家の加藤に依頼することとなった。始めは乗り気でなかった加藤も伊能忠敬記念館を訪れ、ほぼ正確に作られた『大日本沿海輿地全図』を目の当たりにして大きな感動を覚え、伊能に関する調査を始める
そこで発覚したのが「伊能忠敬は『大日本沿海輿地全図』を完成させる3年前に死去した」という事実
江戸時代パートに戻り
伊能忠敬の死によって、幕府から出ていた地図作りのための莫大なお金が止まることを恐れ、何としても伊能忠敬の志を遂行したい弟子たちは天文学者 高橋景保(かげやす)を中心として伊能の死を隠したまま、隠密作戦の下、地図の作成作業を進めてゆく
役者さんが一人二役で時代劇と現代劇を交錯させながら進んでゆく歴史エンタメ作品
どこまで史実に沿って脚本が作られているのかはわかりませんが、落語が元の話しなので現代劇の方では随所に笑いがあり、時代劇の方では涙あり
流石に若い人たちにはあまり受けないのか(笑、観に来ている方はほとんどが40代以上でしたが、良い映画でした
【ここ数年、松ケンが出ている作品のパンフレットは必ず買っていますが、このパンフレットは表裏40ページほどで、伊能図(日本地図)などもついていて、なかなか勉強にもなる立派なものでした】
今まで日本地図がどのように作られたかなんて考えたこともなく、伊能忠敬と、そのお弟子さんたちが日本全国の海岸線を一歩一歩歩くことでほぼ正確な日本地図を完成させたことに驚愕、感動させられます
劇中での脚本家 加藤のセリフにあるように「日本を植民地化しようとしていたイギリスがこの地図を見て、日本すごい!と驚いて植民地化を諦めたんだ」という逸話にも頷けるというものです
この伊能図と薄紙に描いた赤い線(衛星写真で作成した実際の海岸線)を重ねてみると、どれほど伊能図が正確か、わかるようになっています
ラストに近いシーンで、畳の部屋いっぱいに広げられた完成した日本地図を11代将軍・徳川家斉(いえなり)にお披露目する場面はそれだけでジーンときますが
「これが余の国か、美しい」と感嘆し、「伊能はどこにおる?」と尋ねる上様に「ここにおりまする」と高橋景保が差し出した伊能の草鞋(わらじ)に向かって「大儀であった。若くはない身でさぞかし難儀であったことだろう、ゆっくりと休まれよ」と上様が労うシーンには思わず涙が…
伊能忠敬はそのとき70代で、今の時代で考えると90~100歳くらいになるそうです
主題歌 玉置浩二さんの「星路(みち)」と相まって、最後は感動したまま観終わることができました
この映画を観る数日前に違う映画を観て、私的には普通に面白く、なかなか評判の良い邦画だったのですが
映画が終わった途端ほとんどの人が立ち上げって帰ってしまい、残ったのは私含め3人
「エンドロール観ないの?」って感じでしたが、今回(大河への道)は終わった後も誰も立ち上がらず、しっかりとエンドロールを終わりまで鑑賞していました
エンドロールを観たからと言って知っている人の名があるわけではないですが、この映画を作るためにこれほどの人たち、地域、会社が関わって作り上げられた作品だと思うとどの映画も感慨深いものはあります
どうせ観るならば、ぜひこういう映画を観てほしいと思える作品だと思います
映画「大河への道」公式サイト
追記
大河への道での松ケンはひょうきんな、ちょっとお調子者の人物を演じていますが、時代劇パートではいつもポカンと口を開けていることに拘ったそう(笑、確かに開いてた)、そして中井貴一さんはさすがの上手さでした
大河「平清盛」で中井さんと松ケンは親子として共演していましたが、このシーンの中井さん、本当にかっこいいです。「年下とは言え、松山ケンイチを役者として尊敬している」と言っていただけた共演でした